自動車いじりが好きで、これを仕事にしたい。誰もが一度はこんな夢を見たことがあるのではないでしょうか?
- 車やバイクが好き。
- 機械いじりが好き。
- 自分の手で壊れたものを修理するのが好き。
そんな方々にとって、自動車整備士という職業はまさに夢のような仕事に思えるでしょう。
しかし、現実はそんなに甘くありません。
この業界では、業界特有の事情から激務になりやすかったり、厳しい環境、技術の進化に対応するための絶えず続く学習など、数々の困難が待ち受けています。それに加え、経済的な困難も無視できません。
本記事では、自動車整備士のリアルな一面をお伝えし、憧れだけでなくリアリティも併せ持つ視点からこの職業を見つめ直していただくことを目指します。
私の父親は自動車整備士ですから、実際に聞いた体験談も交えて、より具体的なイメージを持っていただけるようにしたいと思います。
自動車整備士を目指す皆様、現役の自動車整備士の皆さん、またはその周囲の方々への一助となれば幸いです。
また、この記事には自動車整備士から医療機器業界に移ってきた同僚の体験談も含まれています。
ぜひ最後までご覧ください。
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自動車整備士とは?
自動車整備士とは、自動車のメンテナンスや修理を行う専門家のことを指します。彼らは自動車が正常に動くための重要な役割を果たし、車が安全に運行できるようにする役割を持っています。
自動車整備士”本来”の仕事内容
自動車整備士の主な仕事は、自動車の整備と修理です。
これには、エンジンやブレーキシステム、電子装置などの車両全体の点検とメンテナンスが含まれます。
また、車両事故が発生した際のレスキューや、故障した場合の診断と修理も行います。
レスキュー業務の多くは当番制。夜間に携帯電話でバッと起きて事故現場に向かう父親の姿は大変そうでした……
自動車整備士の必要な資格
自動車整備士になるためには、一定の技術と知識が必要です。これは専門学校で学ぶことができ、その後の実務経験を経てさらに磨き上げていきます。
また、国家資格である自動車整備士の資格を取得することで、より幅広い業務を担当することが可能になります。
自動車整備士の魅力
自動車整備士の魅力は、何といっても自分の手で車を修理し、人々の安全な移動を支えることができるという点にあります。お客さんから感謝してもらい、信用してもらえることにやりがいを感じる人は多いです。
また、車好きにはたまらない、最新の自動車技術に触れることができるのも大きな魅力の一つです。
しかし、ここからは自動車整備士になる前に知っておくべき難点をお伝えします。夢と現実は時として大きく異なるもの。自動車整備士という職業に対する理想と現実のギャップを理解することは、後悔しないための重要なステップとなります。
【きつい理由】自動車整備士が抱える課題
すべての職業には良い面だけでなく、難点も存在します。そして自動車整備士の仕事もまた、それらの難点からは逃れられません。
物理的な負担
自動車整備士の仕事は、肉体への負担が大きいです。
日常的に手についたオイルを落とすために強力な石鹸で手を洗いますから、自動車整備士の両手はガサガサに荒れています。
重い部品を持ち運ぶこと、不自然な姿勢で作業を行うこと、騒音や振動などの作業環境は、身体への負担となります。また、危険な機械を扱うため、怪我をするリスクも存在します。
自動車整備士の年収は平均程度?
各社の求人サービスによる統計データは以下の通りです。
転職サイト | 平均年収 | 掲載年収の備考 |
---|---|---|
外部サイト : Indeed | 約410万円 | 掲載されている求人情報からリアルタイムで算出中。 |
外部サイト:価格コム(求人ボックス) | 約500万円 | 地域によっての給与分布、求人数の推移等の情報が多く掲載されています。 |
外部サイト:転職会議 | 約433万円 | 年代ごとの平均年収推移が記載されています。 |
また、日本自動車整備振興会連合会が統計をとっている「自動車整備白書」によると2022年の平均は約400万円の様です。
結論:日本国民の平均年収と比べると少し低め。
令和3年度の国民の平均年収統計が出ていましたので紹介します。
給与所得者数は、5,270万人(対前年比0.5%増、25万人の増加)で、その平均給与は443万円(同2.4%増、102千円の増加)となっている。
国税庁 – 令和3年分 民間給与実態統計調査
男女別にみると、給与所得者数は男性3,061万人(同0.5%減、16万人の減少)、女性2,209万人(同1.9%増、41万人の増加)で、平均給与は男性545万円(同2.5%増、131千円の増加)、女性302万円(同3.2%増、94千円の増加)となっている。
結論:金額だけで考えると割に合わない?
平均年収だけを見れば、「そこまでそこまで悪くないかも?」と言う印象を受けますが、年収を底上げする高級車を取り扱う整備士がいてもこの水準です。
そう考えると、一般的な自動車整備士の平気年収はさらに低いことが想定されます。
自動車整備士は、他の専門職に比べて収入が低い傾向にあります。また、専門学校を卒業した後の就職活動や、資格取得のための試験など、初期投資が大きいことも経済的な負担となります。
技術の進歩に対応するための学習が必要
自動車の技術は日進月歩で進化しており、新しい技術や規制に対応するためには、常に最新の知識を学び続ける必要があります。これは時間と労力を必要とし、一部の人にとっては大きなストレスとなる可能性があります。
近年、難しい作業もyoutubeで解説している動画があるので、気軽に学べる利点もあります。しかし、メーカー、車種によって構造に違いがあるため、全てを理解するには中々骨が折れます。
この様なスキル習得のためには、やはりお金以外のモチベーションが必要不可欠ですね。
自動車整備士が憧れる”アジャスター”とは
自動車整備士のキャリアアップした先にアジャスターと言う職種があります。
アジャスターとは、自動車保険業界における特殊な役職をさします。保険金の請求や支払いに関する調査や判断を行う専門家のことを指します。自動車事故が起きた際の被害状況や原因、責任の所在などを調査し、その結果を基に保険金の支払い額を決定することです。
この職業は高度な専門知識と経験が必要とされ、以下のスキルを持ち合わせる必要があります。
- 事故に関する法律や規則。
- 自動車の機能や構造。
- 修復に関する知識。
また、保険会社と保険契約者、または被害者との間の交渉も行います。そのため、公平性と公正さ、そして良好な対人スキルも重要な能力とされています。
崩壊した花形”アジャスター”の実情
アジャスターは、自動車保険業界における重要な役割を果たしています。しかし、その重要性にも関わらず、近年、彼らの年収が低下しているという報告が一部でなされています。この背景には、以下の要因があります。
- 市場の競争:保険業界は競争が激しく、顧客を取り込むために保険料を低く抑える傾向があります。この結果、保険会社の利益が減少し、それが給与に反映されることがあります。
- 技術の進歩:自動車の安全性向上や事故予防技術の進歩により、保険請求の件数自体が減少しているという指摘もあります。これにより、アジャスターの需要が減少し、給与に影響を及ぼしている可能性があります。
- 労働環境の変化:不規則な労働時間や長時間労働が求められることが多いです。しかし、労働環境の改善やワークライフバランスの重視が求められる昨今、その厳しい労働環境が評価されず、給与に反映されないという問題があります。
これらの理由により、アジャスターという職業が長時間労働でかつ低年収になりつつあります。
結果として「花形とされていたキャリアアップも実は夢がない・・・」という問題が生じています。
整備士としてのキャリアを活かすなら他業界の転向へ。
これまでの通り、自動車整備士には以下の様な課題があります。
- 提供するサービスに差がないディーラーでは、価格競争に巻き込まれて安く使われる。
- アジャスターとしてのキャリアプランも今は価値が薄い。
- 高額な報酬を受け取るためにモラルに欠いた仕事をすることもある。
整備士としての腕を活かしつつ、これらの課題をクリアするためには他業種のメーカーへ転職することをオススメします。
ディーラーではなく、メーカー所属で価格競争に巻き込まれない。幅広いキャリアプランが狙える。そんな転職をサポートするのがマイナビメーカーエージェントです。
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きつい理由:40年自動車ディーラーを勤めた整備士の体験談
先述した通り、私の父親は自動車整備士として40年間勤めています。そんな父が直面した問題や感じたことをまとめます。
他所のカーディーラーと価格競争になりがち
受けられる修理や点検のサービスが同じとなると、他社と差別化を測るために価格競争に発展してしまいます。この価格競争は自動車整備士にとっては痛い話になります。
何故なら、この価格競争は「如何にコストを下げ、安価に修理点検サービスを提供するか」になります。このコストは整備士の人件費も例外ではありません。
前述の通り、自動車整備士の給料が一般的な会社員と比べて低いのはこれが原因です。後輩の中には安月給を理由に中々結婚に踏み切れない、と言う悩みを抱える人がいました。
結果、価格競争に負けないために後述する「余計な仕事を回される」ことにつながります。
全然関係ない携帯電話のセールスをやらされる
自動車整備士と携帯電話のセールスは全く関係ない仕事です。しかし、徹底的にコストを下げた分、違う形で売上を出さなければなりません。
そこで最もポピュラーなのが携帯電話のセールス。自動車と携帯電話は「無いと不便だが、買い替える機会がなかなか無い。」と言う共通点があります。
顧客が持っている携帯電話が古くなった時、「ついでに買い替えどうですか?」と聞く事が定例に。本来自動車整備の技術で生活したいのに、したくもない営業をやらなければいけない実情がありました。
外車ディーラーの方が一般的に待遇は良いとされますが、国内に限っては国産車向けのカーディーラーがほとんど。この様な話は至るところで聞きます。
カーディーラーに行くと全然関係ないケーブルテレビや光回線、動画のサブスク等のパンフレットがあるのもこれが理由です。
年収に不公平さが生まれやすい
自動車整備士は前述した通り、安月給で働かされやすいのですが、さらに不公平さを起こしてしまうのは「時間単位で計算されてしまう」です。
売上のために1日複数台の整備しても、給料の計算は時間単位。そのため、1日1台も整備できない同僚と給料が大して変わらないと言う問題があります。
これでは、整備士として順当に評価されていると思えず、働く意欲を無くしてしまいます。
後輩に聞いた:自動車整備士からの転職体験談
会社へいつも愚痴っている父親の話を聞くと、「中々続けるのは難しい業界である」ことに気づきます。
そんな中で、自動車整備士の転職の実情を、私の身近な後輩君からヒアリングした体験談をお伝えします。
後輩の体験談「自動車整備士を辞めて本当によかった」
私は医療機器のサービスエンジニアなのに何故自動車整備士に言及しているのか。その理由は元々自動車整備士で、私の会社に転職してきた社員は多い。からです。
私はかれこれ、20人近くの中途採用者と働いてきましたが、4人に1人は自動車整備士でした。
彼らの転職してからは以下の様な生々しい声がありました。
- 自動車整備士を辞めて本当によかった。
- 資格勉強せずとも仕事ができるなんて信じられない。
- もっと早く転職すればよかった。
- トータルの年収は変わらないのに、時間に対する給料は跳ね上がった。
- 念願の「修理と点検の仕事でお金を貰える」仕事ができる。
自動車整備士は別の業界に転職しやすい
整備のスペシャリストである自動車整備士。以下の様なスキルを持ちますから、雇いたいというメーカー系の企業は実のところ多いのです。
- 工具を自在に扱う指先の器用さ。
- 困難に立ち向かう課題解決能力。
- 故障理由の説明や、顧客ニーズを拾う接客スキル。
- 間接的に人の命に関わる製品を扱うことから、責任感が強い。
- 些細なミスも許さない注意力及び安全意識。
- 多種多様な車種を扱うことから、幅広い適応能力と基礎的な機械の知識を持つ。
ただし、自分がやりたかった事を見失わないで
私の後輩は自動車を整備することに固執しているわけではなく、今後の方向性を考えた時に自動車整備士としてのキャリアを捨てたことになります。
この記事では一般論として、以下の3つの視点から「あまり推奨できない」と結論付けています。
- 金銭的な事情
- 生じる不公平さ
- 不遇な扱いを受ける仕組み
どうしても自動車整備士として今後も働きたいと確固たる意思とプライドがあるのであれば、続けるべきです。
まとめ
サービスエンジニアと称する仕事には様々な製品を扱う職種はありますが、自動車整備士にスポットを当てて解説しました。
自動車をイジるのが好きな人には魅力的な仕事である自動車整備士。その一方で、物理的な負担や、経済的な困難、趣味の延長線でお金を稼げない実情があります。
もし、自動車整備士を現役でやられている方がいらっしゃるなら、一度転職エージェントに相談することを勧めます。あなたが既に持っているスキルで高年収の仕事を紹介してもらえる可能性が秘めています。
中でも相談するのであれば、まずは最大手のdoda、経験を生かすならマイナビメーカーエージェントがおすすめです。
もし、新卒後就職したてで、「自動車整備士になったのは失敗だったな・・・」と思った方は「第二新卒に特化した転職エージェント」が望ましく、中でも転職エージェントネオがおすすめです。
一度キャリア形成のプロに相談してみることをオススメします。