・いつまで経っても、作業ミスが発生する・・・
・作業効率は上げるにはどうすればいい?
・「修理作業が遅く、お客様から怒られる…」
こんな悩みを持つ修理屋さんに向けて記事を書かせていただきました。
プロの修理屋が使う工具は、入社時に支給されます。この支給された工具で修理作業を行うわけですが、それは大きな落とし穴。
支給された工具を使えば同僚と同じ水準の作業になりますが、使いやすいものや、作業が早くなる便利なものもたくさんあります。試さないままは、大きな機会損失。
この記事では、医療機器のサービスエンジニア歴14年の私が、通算50万近く費やしてきた結果、最適解に辿り着いた工具10個と、選んだ理由をまとめて紹介します。
この工具は全て現役で愛用しています。
この記事では、「なぜ工具にこだわる事で作業品質の向上につながるのか」と、私が実際に愛用している工具のそれぞれ理由を解説しています。
修理のプロが工具にこだわる理由
ドライバーやニッパーは今や100均ショップに行けば手に入る工具。プロは何故高いお金を払って揃えるのでしょうか?理由を順番に解説していきます。
100均ショップの工具はタブー
100均ショップで売られている工具は耐久性が低く、作業中に欠損してしまうことが多くあります。
耐久性の低い金属を使用したり、焼き入れ処理等がされていない事が要因。そのため、1、2回使えばすぐダメになります。
作業中に工具が欠損するのは大きなタイムロス。工具が破損するだけならまだしも、以下の様な状況が発生しえます。
- ネジ穴が削れる。
- 切断面がボロボロで見た目が悪い。
- 無理やり使おうとして使い勝手が悪くなる。
便利そうな工具を見つけても、100均ショップの工具は避けましょう。
手に優しい工具は作業が楽でスピーディー
- 切れ味の悪いニッパー
- グリップが細いドライバー
- 持ち手が硬くて、ゴツゴツしたドライバー
- オーバースペックで重いプライヤー
これらは全て作業中、徐々に体力を奪っていく工具です。長時間作業すると徐々にパフォーマンスは落ちるのは当然。
以下の様な優しい工具を使うことで、疲れにくく、作業効率も高まり、スピーディーに仕事ができます。
- 持ちやすい
- 軽量
- 切れ味の良い物
- 手に優しい(ゴムグリップ等)
これらの要素を検討した上で工具を選ぶと良いです。
工具はオシャレよりもカラフルに
多くの工具は黒と銀でできている事が多いです。黒や銀での工具は以下の特徴があり、一見メリットだらけの様に見えます。
黒と銀で工具を統一するとめちゃオシャレなんだけどなぁ……
- 比較的安価。
- 汚れが目立ちにくい。
- 高級感がある。
しかし、黒と銀で揃えた工具は取り出すまでに時間がかかります。特に深夜にまで渡る長時間の作業では、工具を探すのもタイムロス。
工具をカラフルにすることで、工具一つ一つの視認性が向上し、作業時間の短縮につながります。
【体験談】工具選びは「時間を買うこと」に等しい。
私は社会人2年目までは修理の品質が悪く、何度も同じトラブルで客先に出向き、修理も時間がかかり、散々でした。
私の姿を見かねた先輩に言われた以下の言葉が印象に残っています。
「人間は他の動物と違って、道具を器用に扱う生物だから使う道具にこだわりがなければサルと同じ。プロは道具を選ばないとは言うが、プロだって最適な道具を使えば最高の結果を得られる。プロのアスリートを見れば誰だって道具にこだわっているじゃないか」
この言葉からダメ元で工具を色々買って試してみましたが、みるみる正確性とスピードが向上しました。
仕事道具を自分で選んで使うのは自己投資と同義です。
- 効率的な作業ができ、時間、精神的な余裕ができた。
- スピーディな作業で、顧客を待たせる時間が短縮。
- 正確な作業ができ、再訪問などの手間も無くなる。
- 良質な工具を長寿命で使えるから、扱いに慣れて手足の様に扱える。
- 作業中に工具が欠損することもない。
会社によっては工具の経費購入を認められています。
このサイトを見せていただいてもいいですし、一度上司に提案するのも良いでしょう。
オリジナルの工具セットを作ろう!
特定メーカーが工具の詰め合わせセットが売っており、1つ購入することで大体揃います。が、私はあまり推奨しません。メーカーの製造した工具にはそれぞれに特徴的な強みがあります。
その工具の強みを理解し、自分の目的にあった工具を選ぶことが理想です。
厳選工具:工具カバン
ABSストロングケース(アステージ)
- 見た目がしっかりしているのにリーズナブル。
- 布製と違って表面が清掃しやすく、衛生的。
- カバンを開ける時には口が目一杯開いて取り出しやすい。
- 自立して部屋の隅におけるため省スペース。
- 「軽い」「丈夫」「内容量が大きい」の3拍子。
同業他社とすれ違うと、「このカバンを使っている人が多いなぁ……」と言う印象です。
歩くことが多い我々としては軽くて丈夫、愛用者が多い理由も納得です。
最も大きなサイズが一番オススメです。肩掛け紐を通すことができ、内容量も大きいため、社用のノートパソコンや予備部品をたくさん入れて運べます。
ヒッポケース Sサイズ (フジ矢)
上記の工具カバンに入れるのは当然ですが、一緒に使うインナーケースを是非ともお勧めしたいです。サイズがS,M,Lの3種類展開されていますが、中でもSサイズがインナーケースとしてオススメ。
- 高頻度で使う工具が全て収納可能。
- 工具ケースでありながら、工具トレイにもなる。
- 取っ手がついてて軽く、持ち運びしやすい。
- 布製でありながら頑丈で破れにくい。
- 通気性良く、中の工具が錆びにくい。
- 工具の収納・取り出しが雑にしやすい。
厳選工具:ドライバー編
こちらで紹介するものは、基本的にストレートグリップのものよりボールグリップドライバーをお勧めします。
ボールグリッププラスドライバー WEAR 1850 PH2x100mm(WERA)
ドイツの工具メーカーWERA(ヴェラ)のボールグリップドライバーです。2022年11月発売と、かなり新商品です。
ボールグリップドライバーといえばVESSELのロングセラー商品。サイズ、使用感、グリップの柔らかさは似てますが、大きな違いは先端チップのレーザー加工。先端のギザギザがビスに食い込み、ネジを緩めた時に落下が起きにくい処理がされています。
グリップ部の六角形上も特徴的で、力強く握った時に指に引っかかり滑りにくいこと、床に置いた時に転がりにくいメリットがあります。
「WERAのボールグリップドライバーが高い!」と言う方向けにオススメするのはVESSELのボールグリップドライバーです。
ボールグリッププラスドライバー VESSEL +2 x 200 220 (VESSEL)
プラスドライバーはこのロングタイプも必要不可欠。なかなか手が入り込めないビスを回すのに重宝します。
ロングタイプのドライバーはなかなかホームセンターに売っていないので、通販で入手することをお勧めします。
ベクトルスタビー差し替えドライバー(VESSEL)
狭い隙間に入り込んで通常のドライバーで作業するにはこのドライバーがオススメです。
スタビドライバーは狭い箇所で活躍する優れ物。しかし、指からポロッと落ちてしまう欠点があります。
しかし、このドライバーは絶妙なくびれで指からポロッと落ちにくく作業ができます。
- 絶妙なくびれが指にひっかかり、作業中に手から落ちにくい。
- ゴムグリップで手が痛くない。
- 安価で手に入りやすい。
スリムラチェットドライバーセット SRD-224 (SK11)
前述したスタビー差し替えドライバーも狭いところで活躍しますが、更に狭い箇所で重宝するのがこのラチェットドライバーです。
- 付属のビットが小さく、とにかく狭いところに入りやすい
- 歯数が多く、狭いスペースで特に活躍する。
- 先端のヘッドも小さく、手回し部もついてて使いやすい。
電ドラボールプラス 220USB-P1(VESSEL)
電動音が客先に響くのも印象が良くないと思い、電動ドライバーを扱うのは邪道と思っていました。
しかし、この電ドラボールは比較的電動音も控えめ。ボールグリップで扱いやすいのが特徴です。
電動で動かしていない時は電磁ブレーキがかかる様で、普通にネジ回したり、本締めするのにも一役買います。
ただし、ボールグリップよりもグリップ部が大きく、手回ししにくいです。
電動で回すことを前提に使用するのが良い使い方です。
+2のビットを差したままにし、カバー取り外し専用機が便利です。
級タイプ(220USB-1)と新タイプ(220USB-P1)がありますが、違いは以下の通り。
旧タイプ(220USB-1) | 新タイプ(220USB-P1) | |
---|---|---|
回転速度の調整 | 不可 | 3段階で調整可 |
充電ポート | USB-mini B | USB-C type |
本体カラー | 期間限定カラー等有り | 赤の一色のみ |
大きさの違い | 全長がわずかに短い | 全長がわずかに長い |
価格 | 安い | 高い |
マイナスドライバー ノンスリップ 貫通ドライバー -6×100(ベッセル)
マイナスドライバーは語弊を恐れなくいえば、ネジ回しでは無くタガネの様な存在。タガネとして握りやすいストレートグリップのドライバーが用途に最も適しています。
このドライバーは貫通型と言うこともあり、後ろからハンマーでタガネの様に叩ける製品ですから大変重宝します。
マイナスドライバー フォーラインハンドル -2.5×75 (アネックス)
前述のマイナスドライバーより使用頻度が高いマイナスドライバー。こちらもタガネの様に使うことはありますが、より精密な作業向きです。
- ピンセット同様、細かな作業に向いている。
(DIPスイッチの切り替え、ボックスコネクタの引き抜き等) - 以外と使う機会が多い。
(D-subケーブルやRS-232Cケーブルの側面のネジ回し等) - 小さくて小回りが効き、使用頻度が高い。
- 安価で手に入りやすい。
ko-ken 首振りラチェットハンドル Z-eal 2762 (G72) (ko-ken)
ラチェットハンドルは主に自動車整備に使われることが多いですが、小型でどんな状況にも使いやすいのがこのラチェットハンドルです。
ソケットレンチや、ドライバー、六角レンチなど、先端のビットを差し替えることでいくらでも使いやすい様にできます。
- 他メーカー(KTC、Snap-on)などと比べて圧倒的にラチェットが軽い。
- 首振り形状のため、コンパクトかつ自分の手に馴染む形状で使える。
- エクステンションバーと組み合わせて必要な長さに調整できる。
- スピンドルハンドルと組み合わせてさらに使いやすく。
厳選工具:ニッパー、プライヤー編
ミニチュアニッパー N-34(HOZAN)
通常のニッパーは基盤、板金の切断等も考慮し、刃が厚くて頑丈。耐久性も高いです。
一方で紹介する精密ニッパーはパワーが必要な作業は不向きですが、小型で軽く、刃も薄くて鋭いのが特徴。歯が鋭利なため、通常のニッパーよりも軽い力で切断できます。
また、万が一パワーにある切断が必要な場合、後述するラジオペンチが向いているので、このニッパーは細かな作業向けと言う用途で使うことをお勧めします。
- 刃が鋭く、軽い力で切断できる。
- 細い電線や、細かなプラスチックの切断であれば精密ニッパーが適切。
- 耐久性は通常ニッパーが優秀なため、用途次第。
(私は約7年ほど使えました。)
コンビネーションプライヤー PC-06 (ENGINEER)
頻繁に扱うものではないですが、何かパワーが必要な時に活躍するのがこのプライヤー。かれこれ10年近く使っていますが、欠損せず不自由なく使えています。
サイズ感もちょうどよく、グリップ部も使い手に優しい素材で硬すぎず、柔らかすぎないのがポイントです。
ラジオペンチP-14-125 (HOZAN)
プライヤーよりも先端でが細く、力を要する場合に向いているのがこのラジオペンチ。グリップ部にバネが入っていることもあり、手に馴染みます。
ペンチの根本に切断できる刃がついているため、上記のニッパーでできない針金などの金属の切断などに向いています。
ピンセット PT-C04 (ENGINNER)
指先よりも圧倒的に細かい作業ができるピンセット。しかし、物によってはすぐ先端がグニャグニャ曲がり使いものにならないことも。
しかし、このピンセットは細いのに先端が鋭利で程よいバランスで使えます。
- 小さな電子部品をつまむ。
- シールテープを剥がす。
- DIPスイッチの切り替えや、ケーブルの引き抜き等に便利。
厳選工具:レンチ、スパナ類
マルチカラーヘックスレンチセット(WERA)
六角レンチ使うならスイスツールのPB・・・のつもりでしたが、あちらは高価で手が出せませんでした。「似た様な物がないかなー」と探して見つけたのがWERAの六角レンチです。
- カラフルで視認性が良い。
- 剛性がある。
- WERA社独自技術の「ヘックスプラス」を採用。
(六角の辺が少し窪んだ形状をしており、これにより六角穴がナメない「面接触」を実現。) - 素材が工具鋼とステンレスの2種のラインナップがあり。
私はミリサイズとインチサイズの2種類が必要なので、
ミリサイズを工具鋼、インチサイズをステンレスで扱っています。
スタビショート六角レンチ(TAKAGI)
唯一、黒と銀の工具であるこのスタビー六角レンチ。安価で精度も許容範囲。何よりこのサイズの小型の六角レンチが無いこともあり、必然的にこの六角レンチになります。
ラチェットモンキー RM-200 (Switz tool)
大型装置の設置や、移設などに必要なジャッキアップ。通常のスパナだと抜いて刺してを繰り返す手間が面倒……。
しかし、このラチェット機構付きのモンキーレンチはそんな時に重宝します。ラチェット機構がついている為、どんなサイズでも早回しが簡単にできます。
他メーカーも試しましたが、一番ラチェット機構がスムーズなのが、このラチェットモンキーでした。
厳選工具:消耗品類
ダスパー(シルボン紙)
毛羽立ちしにくく、光学系のレンズ清掃などにも使われる高級な清掃様の紙です。
- ティッシュや布ウェスと違い毛羽立ちにくい。
- 薄くてサイズも小型で非常に使いやすい。
- 光学系のレンズや、センサの清掃に最適。
- ピンセットの先端に巻き付ければ狭いところでも作業可能。
エアダスター
ホコリを吹き飛ばすのにシュポシュポ鳴らすエアポンプを使っていましたが、威力が弱く、ゴムの弁がすぐダメになり使えません。
スプレー型のエアダスターを使ってからはそんなストレスが皆無に。指先の軽い力で埃が全て吹き飛ばせます。
まとめ
この道15年、愛用している工具をまとめました。
使いやすいもの、使いにくいものを一通り経験しましたが、やはり良い工具を選べば、
- 作業効率
- 作業スピード
- 確実性
それぞれが高まり、トラブルシュートや顧客対応に専念できます。
ストレス無く仕事に取り組むため、一度使用している工具を見直す機会になると幸いです。
- 工具カバン
-
ポチップ - ドライバー
- ニッパー/プライヤー類
- レンチ、スパナ類
- 消耗品