サービスエンジニアとして働く上で有利に働く資格はありますか?
そんな質問にお答えします。
エンジニアという職業は近年、高年収で且つ手に職として持つには有利な職種です。中でもサービスエンジニアと言う職業がありますが、耳馴染みがなく、どんな資格を身につければ有利に働けるか想像しにくいのでは無いでしょうか。
この記事では現役のサービスエンジニアが以下の内容について解説しています。
結論としては、「責任を伴う仕事内容なのに必要な資格はほぼ不要」という点です。
サービスエンジニアとは
必要な資格を説明する前にまず、サービスエンジニアとはどんな仕事なのか?サービスエンジニアは自社から製品を買った顧客へ保守や修理サービスを提供する技術者です。
ゲーム機やノートPCといった小型のものであれば修理工場に輸送できますが、輸送が困難な重量物や据え置きの機器はその様にはいきません。
その際はサービスエンジニアが現地へ出向き、トラブルの原因調査、定期点検や、修理作業を行います。
サービスエンジニアの仕事を詳しく知りたい方にはこちらで解説しています。
サービスエンジニアに必須な資格は「運転免許」
客先へ出張するのがサービスエンジニアの仕事ですから運転免許が必須。
公共交通機関を乗り継いで客先に辿り着けますが、デメリットがあります。
- 運べる荷物が少ない。
- 客先の場所によっては到着が遅い。
- 移動に時間が掛かる。
従って、普通自動車運転免許は必要と言えるでしょう。
大型の自動車免許は必要?
大型の運転免許は不要であることが多いです。
大きな機材を納品するためにはトラックの運転が必要と思われるかもしれません。
しかし、現代は物流がかなり発達した時代。大きな機材を運ぶ時には外注した方が人件費も車両を用意するコストもかかりません。
よって、大型の運転免許は不要です。
サービスエンジニアとして働く上で有利に働く資格
これより以下はサービスエンジニアとして有利に働くと言われているものを、私の知見から解説致します。
基本情報技術者試験
経済産業省が認定している国家資格。ITエンジニアの登竜門とされる資格です。
資格としてはITの技術者として高度なIT技術を身につけ、基本知識と技能、実績的な能力を身につけた者を証明する為の資格です。
【外部リンク】試験内容や業務内容についてはこちらから
ITが発達した現代としてはあったほうが良い?
ITに特化した製品(サーバー機器や電子カルテ類)を扱うには必要ですが、装置の修理を担当するサービスエンジニアには資格取得に至るまでの勉強は不要です。
サービスエンジニアがIT関係で求められるのは主に以下の3つが挙げられます。
・製品納品時のネットワーク接続の新規設定
(施設のネットワーク管理者から伝えられた通りに設定)
・製品の移設に伴うネットワーク接速の設定変更
(建物が変わると)
・オンライントラブル時のトラブルシュート
(接続が切れてる切れてない程度の判断)
この基本情報技術者試験はネットワークの構成やIT製品の開発等の管理者になるための基礎技術試験です。装置の修理や、納品、トラブルシュートをする上では試験内容の1割を覚えていれば十分。
会社によっては設定マニュアルが用意されており、知識としては自然に身につきます。参考書すら不要と言えるかもしれません。
私自身13年働いていますが、この資格は保有しておりません。
会社からITパスポートのテキストが配布され「最初の数ページだけは覚えておけば十分」と指導され、これ以上の勉強は特にしておりません。
- IPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイの設定や意味の理解。
- ルーターの役割の理解と設定変更方法。
- pingや、route print、tracert等のトラブルシュートコマンド。
取得することによるメリット
メリットとしては以下の通りです。
- 転職時の選択肢として、ITエンジニアへの道が広がる.
- 実務時のオンライントラブルの解決する為のスキルが広がる。
出題範囲にプログラミングも含まれており、PCへの理解が深い人物としてアピールできますから、選択肢を広げる為に持っておいて良いと言えます。
私自身、過去勉強したプログラミング言語にHTML、Perl、C、C#、VisualBasicがありますが、趣味の延長上で覚えもの。トラブル時の解決には少し役立っているかもしれませんが、資格取得できるほど覚えているかは疑問です。
電気工事士試験
財団法人の電気技術者試験センターが認定している国家資格です。wikipedeiaによると以下の通り。
電気工事士(でんきこうじし)(英: Electrician エレクトリシャン)は、電気工事の作業に従事するために電気工作物の工事に関する専門的な知識と技能を有する者に与えられる国家資格であり、またその免状を都道府県知事により交付されている者である。電気工事士には第一種電気工事士と第二種電気工事士とがある。
電気工事士法の定めにより、原則として電気工事士の免状を受けている者でない限り、一般用電気工作物および500kW未満の自家用電気工作物の工事に従事することはできない[1](違反した場合には懲役または罰金の規定がある[注 1]。なお、500kW以上の自家用電気工作物の工事は適用除外[注 2])。
【外部サイト】電気工事士 – wikipedia
業種問わずとるべきなのか
この資格は高電圧の設備工事や、コンセントの増設等、建造物への手を加えるのに必要な資格。装置の修理を担当するサービスエンジニアとしては8割〜9割近くの業種においては不要と言えます。
一般的な修理作業をする上では配線の接続、ハーネスとコネクタの接続まではやりません、全て部品の製造工場で出荷されたものを取り付けることがほとんどだからです。
また、仮に持っていたとしても実務で電気工事を行うことはほぼ100%ありません。何らかの電気工事の必要性が出た場合には客先の管理部門や不動産の管理会社を通し、電気工事の専門業者が実施するのが本来のプロセス。作業により施設が停電したり、他の機器のトラブル等が発生した場合には作業者の所属する会社が責任を持ちます。
医療機器メーカーに所属し、かれこれ80人近くの同僚と一緒に働いてきましたが、この資格を保有しているサービスエンジニアにあったことはありませんし、私も保有しておりません。
取得によるメリット
2種の試験問題には一般的な電気回路試験が含まれており、資格を持っている事はその知識の証明になると言えます。
しかし、資格の意図としても電気工事士として働く上で必要な知識を求められる内容。時間と労力をかけてまで取得するメリットはあるかと言われれば懐疑的です。
家電製品エンジニア
一般財団法人家電製品協会が認定する国家資格です。wikipediaによると以下の通り。
家電製品エンジニア(かでんせいひんエンジニア)(旧称、電気・電子修理技術者資格)とは、家電製品などの設置、接続、セットアップ、リカバリー、修理、その他不具合症状の解消等に従事する者の知識や技能を認定する民間資格である。認定は、一般財団法人家電製品協会が実施している。
【外部サイト】家電製品エンジニア – wikipedia
旧称が「電気・電子修理技術者資格」と示す通り、最も機械製品の修理技術を示すにはうってつけの資格と言えます。試験内容も以下に示す通り、実践的に修理に必要なプロセスを学べると言えます。
- 不具合具合原因を各種要因に切り分けられる。
- 論理的で合理性のある診断、処置方法を理解し、実行できる。
- 必要な工具、測定器を使うことができる。
- 安全点検の知識、実行。
- 電気安全に関する知識、関連法規の知識、適切な運用。
- 家電製品の安全・上手な使用等について適切な技術的支援を与えられる。
取得によるメリット
身近な家電製品を用いた修理技術の証明のため、持っていることで修理技術の証明になります。
しかし、試験自体はやはり家電(AV機器、生活家電)に特化しており、知名度も低い資格。転職に強くなるとは言いづらいです。
元々サービスエンジニアと言う職種自体もマイナーで、求人情報にも未経験、資格無くても可、と言うこともありこの資格自体忘れ去られている傾向にあります。
この資格が活きる就職先は家電を扱う家電量販店、若しくは大手電機メーカーへの就職が多い様です。
また、独立する道もある様です。個人ユーザーや、企業の下請け、個人でやるからこそのフットワークの軽さを活かして幅広く業務をこなせます。
キャリアの方向性を幅広く持ちたい場合、持っていても損にはなりにくいかもしれません。
医療機器を扱う上で必要な資格
これまで一般的なサービスエンジニアとして”あると良いのではないか”と、想定される資格を述べました。これよりは限定的に医療機器を扱う上で必要な資格について解説します。
医療機器を扱う医療従事者は資格が必要。
医療従事者として働くには、自分のなりたい職種に適した大学や専門学校で必要な科目を修得し、以下の免許を取得する必要があります。
代表的なものとしては以下の通り
- 医師免許
- 看護師免許
- 臨床工学技士免許
- 臨床検査技師免許
さらに、医療機関に所属する医療従事者は、担当する機器に応じた以下の様な資格が必要になることもあります。
- ガス滅菌機を扱うには”特定化学物質作業主任者”
- レントゲン機器を扱うには”エックス線作業主任者”
医療機器を修理するには”医療機器修理責任技術者基礎講習”が必要
メーカーやディーラーが医療機器を整備するには事業所でそれぞれに自治体へ申請しなければなりません。その際に、”医療機器修理責任技術者専門講習”を修了した代表者1名の届出が必要です。
こちらの講習は未経験者では受けられず、メーカーやディーラーに入社して実務経験が3年必要。よって、医療機器のメーカーやディーラーにサービスエンジニアとして入社するには資格は不要です。
入社後に必要な研修や講習を受けることがほとんどです。医療従事者として働くには専門的な勉強と実習の必要がありますが、医療機器のメーカーやディーラーへ入社するハードルは低いと言えます。
医療機器メーカーで高年収になる為にはTOEIC一択!
サービスエンジニアとして高年収で働くには”外資系の医療機器メーカーへ転職すること”が近道です。
前段で様々な資格を紹介しましたが、それらの資格取得よりもTOEICの高得点の方が最も努力に対する対価が大きいと言えます。
何故外資メーカーが高年収なのか
端的に言うなら「海外の医療機器メーカーが強すぎる」と言う点です。実際の2021年の医療機器メーカーの売上ランキングを紹介します。
2021年 医療機器企業上位30社 収益ランキング
https://www.mpo-mag.com/issues/2021-07-01/view_top30/the-2021-mpo-top-30-medical-device-companies-report/
- Medtronic $30.12B
- Johnson & Johnson $22.95B
- Abbott $22.59B
- Philips $19.32B
- GE Healthcare $18.01B
- BD $17.11B
- Siemens Healthineers $16.93B
- Cardinal Health $15.44B
- Stryker $14.35B
- Baxter $11.67B
- Boston Scientific $9.91B
- B. Braun $9.12B
- 3M Health Care $8.34B
- EssilorLuxottica $8.25B
- Danaher $7.40B
- Zimmer Biomet $7.03B
- Alcon $6.76B
- Fresenius $6.22B
- Olympus $5.66B
- Terumo $5.57B
- Smith+Nephew $4.56B
- Edwards Lifesciences $4.39B
- Intuitive Surgical $4.35B
- Canon Medical $4.22B
- Hologic $3.78B
- Getinge $3.64B
- Hoya $3.47B
- Dentsply Sirona $3.34B
- ResMed $2.96B
- Hillrom $2.88B
世界的シェアを誇る日本の内視鏡。そのオリンパスですら19位。
1位のメドトロニックとの差は大きく、6倍近く開きがあります。
この様な順位になるのは何故?
医療機器業界13年間在籍する私の肌感ですが”医療現場に確変をもたらす製品は海外発であることが多い”事が代表的な要因と言えます。
国内メーカーは医療事故等のリスクを嫌い、既存の技術を成長させることが中心。新製品が出たとしても10年前からある既存技術を実用化させたものばかりです。
海外メーカーの方が最新技術を用いて比較的医療事故のリスクが疑われる製品を提供します。一見危険の様にも見えますが、十分にリスクヘッジをしながらも製品を販売する強かさが外資医療機器メーカーにあります。
英語苦手でも大丈夫?
私自身英語は大の苦手ですが外資企業に所属しています。私の体験談から言わせていただければ今の時代はDeepLやGoogle翻訳でマニュアルを翻訳することで最低限仕事にはなります。
業務を継続していると徐々に翻訳が手間になり、直接読む事が習慣化。少しずつ英語が身についていきますので、その言語を使う環境に身を置くのは大きなメリットと言えます。
しかし、海外研修や出張がある以上、共通言語は必須。事前に身につけておいて損にはなりません。
まとめ
サービスエンジニアに必要な資格と医療機器を扱う上で必要な資格をまとめました。
- 普通自動車運転免許は必須。
- 関連性がある資格3つの紹介を紹介
- 基本情報技術者試験
- 家電製品エンジニア
- 電気工事士試験
→いずれも特定の業種に特化しており、必須というわけではない。
興味を持ったら選択肢に入るかもしれない、というレベル。
- 医療機器を扱う医療従事者には必要な資格がある。
- 医療機器を扱うメーカーやディーラーに
- メーカーやディーラーが医療機器を整備するには代表者が医療機器修理責任技術者の講習を修了しなければならない。
- 代表者1名だけ講習が完了していれば問題ない。
- 医療機器の基礎講習と応用講習が必要になる。
- 医療機器を扱い、高年収になるにはTOEICで高得点を取ろう。
サービスエンジニアは働くまでのハードルが低く、高年収を狙える業種です。
しかし、技術の指標を表せる資格が無く、あったとしても間接的な資格が多く、実力を証明する資格はありません。
逆に言えば、実力を表すのは勤続年数や所属企業、取扱い製品の業種や話し方でその人の評価が決まります。
残念ながら就活や転職で有利に働く万能的な資格がありませんが、参考になると嬉しいです。